2012年01月18日

なぜミュージシャンのブレイク予想は難しく、お笑い芸人のブレイク予想は当たりやすいのか。

自慢じゃないが、僕はどのミュージシャンが売れるか売れないかを予想させたら、かなりの高確率で外す。これまでに僕が「売れない」と思ったら大ブレイクしたという話は、幾つか良いネタを持っている。

逆に僕が「売れる」と思ったお笑い芸人を当てる確率は、けっこう高い。僕のレーベルのwebサイトの一口コメント欄を欠かさず見ている人なら、その精度の高さは知ってるはずだ。そんな人は一人もいないと思うが。

とは言っても、これは僕だけの話ではないと思う。ミュージシャンの売れる/売れないの予想は、誰にとっても難しい(後になって「売れると思った」と言う人は多いけど)。けど、売れると思ったお笑い芸人が実際に売れたという事は、お笑い好きなら一つか二つは持っていると思う。

お笑い芸人のブレイク予想

それはなぜか? ミュージシャンとお笑い芸人の世界の違いを対比させてみれば、その理由は分かるはずだ。

ミュージシャン(以下M):音楽の価値は多元的である。
お笑い芸人(以下W):お笑いの価値は「面白い」のみの一元的である。

M:「良い」音楽の基準は曖昧である。
W:「面白い」の基準は、生理的に笑うかどうかで判定される。

M:「良い」音楽だからといっても、必ず売れる訳ではない。
W:「面白い」芸人は必ず売れる。

M:ポップミュージシャンの世界では、「売れる」ことが全てではない。
W:お笑い芸人が目指すべきものはただ一つ。「売れる」ことで「売れ続ける」ことである。

M:ミュージシャンの成功の尺度は多様にある。
W:お笑いの「売れた」尺度は、「どれだけ沢山テレビに出ているか」だけである。

M:その人(達)以外の要素も、ミュージシャンの成功に掛かっている。
W:お笑い芸人の成功は、その人(達)の面白さに全てが掛かっている。

M:ポップミュージックは、才能(センス)だけで勝負する世界。
W:お笑いは、才能を努力と勉強で磨いていく事で勝負する世界。

一言でいえば、お笑い芸人は「分かりやすい」世界で、ミュージシャンは「分からない」世界ということだ。だから誰か成功するのかを予想するのも、「分かりやすい」し、「分からない」のだ。

今度、上に書いたことについて、もう少し詳しく書きたい。

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言い訳を書かせてもらえば、僕はミュージシャンを売れそう/売れなさそうと見る事はほどんど無い。というか、僕がリスナーとしてミュージシャンに求めるものは、「良い作品」だけで、売れたか売れなかったかは、全く興味が無いのです。



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モンティ・パイソンの映画から、「Every Sperm is Sacred」のシーン。「精子を無駄にするな」という歌をミュージカル調にして、子供たちに歌わせる、イギリス人らしい悪趣味な笑い。

posted by 竹内知司 at 00:09| テレビ

2012年01月07日

祈・来日! 新・三大「Stereo MC's」

ご存知「マツコ有吉の怒り新党」の人気企画のフォーマットを勝手に拝借させてもらいました。Stereo MC'sの単独来日公演の実現を願って、何かeelsの時のようなのを書きたいと思っていたのですが、面倒になったので。


[Stereo MC'sについて]
1987年結成のイギリスのHip Hopグループ。未だにメンバー構成がよく分からないのだが、Rob BirchとNick "The Head" Hallamの二人で結成。でもメンバーの中にはドラムやコーラスの人もいるが、実質的にこの二人がStereo MC'sと言っていいだろう。1990年のセカンド『Supernatural 』がアメリカで小ヒットし、続くサード『Connected』が大成功する。このままビックバンドになるかと思ったら、以後9年間も新作出さないグーダラぷり。その間は、MadonnaからNIGOまで片っ端からリミックス仕事をして食いつないでいた。4枚目の「Deep Down & Dirty」は、その頃にはすっかり忘れられた存在になっていて、大コケ。2000年代はDJ活動がメインになっていく。2008年に出した6枚目「Double Bubble」は、思いっきりエレクトロ路線になって、これが実に良いアルバム。2011年に最新作「Emperor´s Nightingale」を出している。

1992年頃のStereoMCs
たぶん全盛時の編成での写真


◯シングル「What Is Soul?」(1989)


Stereo MC's - What Is Soul? 投稿者 Stereo-MCs

セカンドシングル。時代を感じさせるファッションだが、曲は今も古さを感じさせない。1996年にMo'Waxから出た名作コンピ「Headz 2」に、これのインストバージョンが収録されている。同盤収録曲で唯一の80年代作品にも関わらず、一番の先鋭さを放っていたが、それが却って彼らの時代を超える普遍性を証明している。



◯「Fever」(1993)



Acid Jazzのコンビ「The Rebirth of Cool」に収録された曲。僕はこの曲で初めて彼らを知ったが、最初にこれ聴いた時はビビった。今じゃ誰もが名前すら思い出さないAcid Jazzブームだが、この曲は真に"Acid”で"Jazz"だった。

Steve Hillage remix(2001)

中近東風にアレンジされたremixバージョンも、カッコえええぇぇぇ。



◯DJ Mixアルバム「DJ KICKS」(2000)

Stereo MC'sのDJ KICKS
数々の名MIXを残してきたDJ KICKSシリーズから、まさかのStereo MC's。8年ぶりのリリース作品だったし、DJやってるって知らなかったし。しかしこのMIXはすごい。Mike Theodore Orchestraから始まって、Ultramagnetic MC'sに、Sofa Surfers、Red Snapperまで掛けちゃう暴れん坊MIX。ファンク、ヒップホップを背景にしながら、いろんなジャンルを取り入れた彼らのリアル・Bボーイぶりを説明している。ここまで「作品」と感じさせるDJ MIXを、僕は他に知らない。

この作品には彼ら自身の曲も入っているのだが、これがまたカッコいい。次作への期待に胸膨らんだが、翌年発表の「Deep Down & Dirty」には未収録。アルバムの出来も……。
Rhino Part I


Rhino Part I I


以降、時々mixtapeをフリーで公開している。そのどれもが良い。でも期間限定だったり、発表先もバラバラなので、なかなか全部集めきれません。

2006年のStereoMCS
今はコーラスの人も入れた3人編成。


Stereo MC'sのライブはめちゃめちゃ良いって評判なんだが、未だに見た事ない。たぶん今までに単独での来日公演はなし。2001年のフジロックに出たが、単独があると思ってパスしたら、結局無かった(その年のフジのベストアクトだったらしい)。この頃から「単独ではライブが無く、日本ではフジかサマソニだけ」洋楽バンドが増え始めた事実を、読み誤った……。以降も来日が無いまま、本国でも人気がしぼんできた。いつかライブが見れる日が来るのか……。せめてDJだけでも来て欲しい。


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posted by 竹内知司 at 01:42| つれづれ

2011年12月30日

インターネットラジオについて思う

パンドラ

もう10年ぐらい前になるけど、Pandoraが始まった時、早いもの好きな僕はすぐに飛び付いた。Pandoraは聴けば聴くほど、ユーザーの好みが解析されていき、プログラムで選曲してくれる様になるというのが売りだった。今はもう日本では聴けないけど、当時はかなり革命的なサービスだと思った。

でも飽きた。一週間ぐらいで。

それから6年後。mixiがmixiミュージックというのを始めた。これもPandoraと似た仕組みのストリーミングサービスだったけど、Pandoraより楽曲数が豊富だった。実際やってみると、かなりディープなインディーものの音源まであって、プログラムも高度で的確に僕の好み通りの曲を流してくれた。

でも飽きた。一週間ぐらいで。

その4年後に、WFUVのネットラジオにたまたま出会った。New Yorkにある大学のカレッジラジオをそのまま流していて、昔と違って途切れることも少なから、良く聴くようになった。

それから一年以上経つが、ちっとも飽きない。

WFUVのAlternate Side

PandoraやLast.fmは好調なようなので、あくまで個人的な感想に過ぎないのだけど、人工的に選曲されたものは飽きる。どんなにCPUの性能が上がり、プログラムが高度になっても、生身の人間が選曲する面白さを超えることは出来ない。

人の好みは法則化出来ない。いや出来たとしても、その法則どおりだと逆に飽きる。10のうち9は法則どおりだとしても、1はそこから外れたものでなければならない。でもその1は何でも良いかと言うと、そうではなく、そこにもまた法則がある。でもその1のうち0.9は法則どおりでも、0.1は……と、永遠に続く。

だから、DJ(クラブで掛ける方も、ラジオで掛ける方も)や選曲家(そんな職業があるか知らないが)は、これからも無くならない、と思う。どれだけコンピューターゲームが進化しても、トランプや将棋が無くならないと同じように、それはいつまでも機械に取って代わられるものでは無いだろう。



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そのWFUVで昨日掛かっていたのが、Luscious Jacksonの「Citysong 」。この人達、カッコ良かったよねー、と思ってたら、今年再結成したんだってね。






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posted by 竹内知司 at 00:18| 音楽

2011年12月14日

すればいいのに(11):Glimmer Twinsを目指してみればいいのに

もし1956年6月15日のセント・ピーターズ教会で、ポール・マッカートニーとジョン・レノンが出会う事がなかったら、あの名曲たちは生まれただろうか? もしキース・リチャーズがDartford駅のホームで、レコードを抱えたミック・ジャガーに声を掛けていなかったら、二人はスタジアムでライブをする事があっただろうか? 

歴史に「もし」は禁物なのは十分承知しているが、それでも思うのだ。ポールもジョンも、キースもミックも、音楽の才能を発揮することなく、今頃はブルースやエルヴィスの好きなイギリスのお爺ちゃんなのかもしれないと。

1965年のジョンとポール

この二組に限らず、ロックの歴史は二人の運命の出会いから始まる事が多い。一人だけだと平凡だった二つの才能が、一緒に曲作りをすることで花開き、歴史に残る名曲を産み出すようになる。そんな例は名前を挙げればキリがない。

だが、いつの頃からか、ロックの世界から"黄金の二人"の話を聞くことが少なくなった気がする。東京にいる僕の知る範囲でも、作曲は一人ずつでする事がほとんどで、コンビで曲を作るという話はあまり聞かない。

今は音楽を覚えるのも、曲作りをするのも、なんでも一人で出来るようになった。だからコンビで曲作りする人が少なくなったのかもしれない。

もし15歳のジョンが2011年にいたら、ポールに教えてもらう前に、教則本で正しいコードの押さえ方を覚えていたかもしれない。17歳のキースはミックの持っているレコードを聴きに行かずに、YouTubeで検索掛けているかもしれない。

若き日のミックとキース

いろいろな事が便利になって、一人でも曲作りが出来るようになった。でも、異なる個性がぶつかり合う事で生まれる魔法は、ProToolsでも作れない。ここでようやく前置きが終わったが、いろいろと行き詰まりを感じているミュージシャンは、誰かと共作してみたらどうだろうか? 予想出来ない化学反応が起きて、奇跡のような曲が生まれるかもしれない。次代のGlimmer Twins(ミックとキースのコンビ名)は、もしかしたら貴方とあと誰かなのかもしれない。



すればいいのに:インデックス
Glimmer Twinsを目指してみればいいのに
かったるい曲はやらなきゃいいのに
物販は自分ですればいいのに
流行りに乗っかっちゃえばいいのに
アクション決めればいいのに
ハンドマイクで歌えばいいのに
ステージ衣装を作ったらいいのに
いっそ変わってみたら良いのに
カバー曲もやればいいのに
なにかインパクトのあることをやればいいのに
エンターテイナーになればいいのに
「すればいいのに」




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Mergeから今度アルバムを出すNew YorkのHospitalityの、アルバム先行曲。この微妙な英語が耳に残る感じは…、渋谷系?スウェディッシュ・ポップ? 90年代の渋谷HMVで流れてそうな感じ。

Hospitality - Friends of Friends by MergeRecords
posted by 竹内知司 at 23:37| すればいいのに

2011年12月10日

すればいいのに(10):かったるい曲はやらなきゃいいのに

イアン・マーティンの書いたこの記事の中で、僕が最も頷いたのが(4)の「かったるい曲で終わらせない」ってとこ。これは「ライブハウスあるある」ですよ。

私見だけど、日本では速くてノリのいい曲を子供っぽいとして、ミドル/スローテンポの曲を本格的だと思うバンドが多いと思う。なぜなんだろう? バラードをこよなく愛する日本人(というか東洋人)の血はここでも消えることはないのか? インディーロックでもシュゲイザー、ポストロック、サッドコア的な曲をやりたがるバンドは常にいる。イアンの言うように、パンクバンドでも激情歌い上げ系の曲(しかも長い)を挟むバンドが多い。

知らないバンドのミドルテンポの曲をライブハウスで聴かされている時間は、ほとんどの場合、ただただ退屈だ。ひどいバンドだと25分のライブで3曲もそんな曲をやったりする。

1997年頃のブラー

古い話だけど、1997年にニューヨークでやったチベタン・フリーダム・コンサートに、Blurも出演した。当時ブリットポップの覇者として君臨していたBlurも、アメリカでは殆ど無名の存在。しかもビースティ・ボーイズ主催なので、スケーター系の暴れん坊な客が多く、彼らには超アウェーな状況だった。だか彼らは30分もないライブに、「Park Life」「Country House」といったブリットポップな曲は封印して、「Song2」「Jubilee」「Pop Scene」といった速い曲だけで挑んだ。まるでメロコアバンドのようなセットリストによって湧き上がるモッシュ&ダイブの嵐の中、僕は「プロだな」と感心していた。

ワンマンならともかく、対バンイベントの場合、ほとんどのお客は初めて自分達を見て、そんなに興味を持っていない。このライブで掴まなかったら、二度と見てもらえない。そう考えれば、セットリストを考える時に何を第一にしなくしゃいけないか、答えは決まっているはずだ。


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そのフェスの時のblurのインタビューとライブ映像がちょこっと(途中で真っ青になっている)。みんな若いねえ。





すればいいのに:インデックス
Glimmer Twinsを目指してみればいいのに
かったるい曲はやらなきゃいいのに
物販は自分ですればいいのに
流行りに乗っかっちゃえばいいのに
アクション決めればいいのに
ハンドマイクで歌えばいいのに
ステージ衣装を作ったらいいのに
いっそ変わってみたら良いのに
カバー曲もやればいいのに
なにかインパクトのあることをやればいいのに
エンターテイナーになればいいのに
「すればいいのに」
posted by 竹内知司 at 00:45| すればいいのに

2011年12月06日

2000年代以降のアメリカのインディーロックを取り巻く状況の変化に関する覚え書き:その2

その1からの続き

・アルバムの発売に先駆けて、先行シングル的に1曲をフリーダウンロードをする事が定着した。もともとアメリカでは80年代末期ぐらいから、シングルはカセットをスーパーのレジ先で1ドルで売っていたりしてたので、それがMP3に置き換わっただけ。ダウンロードの際は、メールアドレスを記入させたり(メーリングリストに加える)、TwitterのRTやFacebookの「いいね!」を押させたりしている(そうすると、そのフォロワーや友達に対しての宣伝にもなる)。ミニアルバムのフリーダウンロードもたまにある。

・HipHopやダンスものでは、先行シングルの代わりにmixテープをフリーダウンロードさせたりしている。

・(発売前の)アルバム一枚丸ごと試聴も広がってきた。それをNPR(全米ラジオ協会)のwebサイトでやっていたりするのが面白い。

・そうした新曲ダウンロードやアルバム試聴の情報を伝えるのが、web音楽メディアの役割になってきた。

ピッチフォーク

・今はPitchforkが一番影響力の大きいサイトか? ローリング・ストーン、SPIN、NMEなどもwebサイトに力を注いでいる。他にはStereogum、Some Kind of Awesomeは情報が充実している。

・カレッジラジオの影響力が強いのはアメリカの特徴だけど、どこの放送局もネットラジオをやるようになった事で、その力がさらに増した。アメリカは日本と違い、ネットのストリーミング放送は"放送"とみなされ、曲を流すのにレコード会社(権利保有者)の許諾が必要ない。


・CDが衰退していくのと逆に、レコード(アナログ盤)の存在感が強くなってきた。レコードは量販店では取り扱わないので、個人経営のレコード屋の貴重な売上になっている。

・更にリリースはダウンロードとアナログ盤だけになって、CDは最初から作らないアーティストも多くなってきた。

・それどころかカセットテープまで復活している。カセットテープ専門のレーベルまで出て来た。

・iTunes Storeなどの配信サイトと合わせて、自社サイトから直接MP3をダウンロード販売するインディーレーベルも多い。

・インディーレーベルやバンドは、自分達のwebサイトからの直販にも力を入れている。その場合はMP3ダウンロードやCDだけでなく、それにTシャツやアナログ盤も付けたセット販売にして、売上単価を増やそうとしている。(例として上げると、eelsの「End Times」はオフィシャルサイトでは、通常CD+ダウンロードで9.99ドル、4曲追加のデラックスCD+ダウンロードで11.99ドル、デラックスCD+ダウンロード+Tシャツで22.99ドル、デラックスCD+ダウンロード+Tシャツ+アナログ盤+ポスターで44.99ドルと、他も含めて全6種類で売っている。)

・ツアーのチケット先行予約すると、1曲フリーダウンロードを提供するバンドもある。


Eelsのサイト


以上、アメリカのインディーロック周辺の変化と、それに対するレーベルやバンドの取り組みをまとめてみました。日本とは状況も法制度(ネットラジオな)も違うけど、なにかの参考にはなると思います。


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My Little Airportの新作が8月に出ていた。この5分前まで知らなかった。なんか今回はジャケが……。





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posted by 竹内知司 at 00:04| 社会

2011年12月02日

2000年代以降のアメリカのインディーロックを取り巻く状況の変化に関する覚え書き:その1

・MTVがミュージックビデオを掛けなくなった。切っ掛けは1992年に放送が始まった「The Real World」。これのヒットから次々とリアリティー番組が増えていって、ミュージックビデオを掛けるプログラムが次第に減少。80年代、90年代に流行った大予算を掛けたドラマ仕立てのビデオは少なくなっていった。

・そんな状況から出て来たのがYouTube(2005年頃から?)。今ではミュージックビデオを見るメディアは、YouTubeが主流になっている。

・ムービー撮影用のカメラもデジタルが主流になって安くなり、編集もノートブックとフリーソフトでも十分なレベルに出来るようになった。インディーバンドでも、YouTube上ならメジャーレーベルの作ったものとも遜色のないミュージックビデオが作れるようになった。


アメリカではタワーレコードは倒産

・アメリカではタワーレコードは倒産。HMVやVirginなどの大型レコード店は軒並み撤退。残ったのは売れ線しか置かない、ショッピングモール内のチェーン店や、ウォルマートなどのCDコーナー。

・CD販売のメインはAmazonなどのネット販売に移っていく(2000年頃から?)。もともとアメリカでは、通信販売やクレジットカードでの買い物は若い人の間でも一般的だったので、すんなりと移行していった。

・そしてそれは2004年のiTunes Storeの開始と共に、ダウンロード販売へと移っていく。レーベル側もダウンロードでの販売促進を積極的にしていて、通常版と2、3曲増やしたデラックス版の二種類を出す事が多い。

・アメリカでは、ダウンロード販売が全体の60%の売上を占めるようになった。配信のほとんどがPC配信。(日本では25%程で、その大部分が着うたなど携帯用配信)

iTunes Store


・ダウンロードでは後発のAmazonは、シェア追い上げのために必死の肉弾戦を展開。売れ線のアルバムは発売直後に、5ドルとか3ドルとか仕入れ値割れの値段で販売している(差額分は販促費としてAmazonが負担している)。イギリスでも7digitalが同様の販促をしている。

・メジャーレーベルも力を入れるのは、ヒップホップやR&B、ポップなどで、ロックには力を注がなくなった。

・メジャーレーベルでCDを出すメリットは、レコード店にCDを並べられる流通力、ミュージックビデオなどに予算が掛けられる資金力、MTVやラジオなどに曲を掛けてもらえる宣伝力。それが販売はAmazonとiTunes Stone、ミュージックビデオはYouTubeで流すのが主流になると、メジャーレーベルにいるメリットは薄くなった。インディーレーベルからメジャーレーベルへ移籍するバンドが少なくなり、逆にメジャーレーベルとの契約を切ってインディーレーベルに移籍したり、自分でレーベルを作るアーティストが多くなったのには、こういう背景がある。

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その2に続く。



The Magnetic Fieldsの「You Must Be Out Of Your Mind」。いい曲だねえ。こういうのをチェンバー・ロックというのか? 




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posted by 竹内知司 at 00:06| 社会

2011年11月26日

すればいいのに(9):物販は自分ですればいいのに

これは10年前にも同じ事を書いている。それ以前にも現場では言っていた。これはバンドをやっている人達の間では良く知られた事だと思う。いや、これはもう憲法に等しいルールだ。だが今でもこれをやっていないバンドは多い。ライブハウスでそんなバンドを見る度に小言を言いたくなってしまう。だから今更とは思いつつも、あえて今ここで書くことにした。ライブの後の物販は、メンバー自身でやりなさい、と。

CDの手売り


ライブ会場でのCDやTシャツの手売り。これをメンバー自身でやると売上は違う。いろいろ見てきたけど、これは確実に言える。お客さんがライブ後のメンバーに声が掛けられる、良いタイミングになるからだ。それを彼女や友達、あるいはファンの一人を「スタッフ」と呼んで、やらせているバンドを見るとなんとも残念な気持ちになる。

10年前から時代は変わったが、その重要性はさらに増した。CD売場は減少し、音楽メディアは小さくなり、ミュージシャンにとっての主戦場はライブハウスやフェスになった。今やインディーバンドにとってCDは、ライブハウスで買うお土産のようなものになった。そう言えば今年のぐるぐる回るでは、BiSがライブ後にCDを手売りして完売させていた。アイドル業界ではメンバーによる手売りは常識だが、その力学はインディーバンドでも同じだろう。

廃校フェス1年目の時、ライブ後に少年ナイフがメンバー自ら物販しているのを見て、感激したのを今でも鮮明に覚えている。あの少年ナイフですよ!ニルヴァーナと共に全英、全米とツアーを回った事のある、今もって世界で最も有名な日本のバンドである、あの少年ナイフですよ! 「自分達で物販するのはカッコ悪い」とか言うバンドには、こう問いたい。「君達は少年ナイフより有名なのか?」と。

CDの手売り


これはサイン会なのだと思えば良い。お客さんはCDという商品が欲しいのではなく、バンドとのコミュニケーションが欲しいから、物販コーナーに行くのだ。1枚でも多くのCDが売れる事によって、オーラというのは自然に付いてくる。現場に立とうとそこから逃げようと、売れないバンドにオーラなんて無い。いずれにせよ、ミュージシャンは自ら売り場に立つべきである。


すればいいのに:インデックス
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ハンドマイクで歌えばいいのに
ステージ衣装を作ったらいいのに
いっそ変わってみたら良いのに
カバー曲もやればいいのに
なにかインパクトのあることをやればいいのに
エンターテイナーになればいいのに
「すればいいのに」




フィラデルフィアのDr. Dogの「Shadow People」。染みるねえ。最初の出だし聴いた時は、Flaming Lipsの「She Don't Use Jelly」と間違えた。
posted by 竹内知司 at 02:48| すればいいのに

2011年11月22日

ライブハウスのノルマは悪ではない:訳者解説というか感想

11月17日に投稿したイアン・マーティンの「ライブハウスのノルマは悪ではない」に対する、訳者解説というか、感想文です。


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ライブハウスのノルマ批判は、これまで幾度となく繰り返されてきたし、ネットで検索を掛ければ幾らでも見つかる。この記事が興味深いのは、ライブハウスを悪玉にしていない点だけでなく、外国人記者らしく、解決方法を提示している所だ。

イアンはノルマ制は"仕方ない"ことで、それは少ないインディーファンの払うチケット代だけでは、東京の高い賃料をライブハウスが払えないからだとしている。

興味深いのは、イアンはライブハウスを日本のインディーシーンの現場として捉えていること。僕の見方はもっと辛辣だ。

ライブハウスのノルマ

日本ではインディーズとは(インディーロックなんて言葉は全く定着していない)、バンドの状態を指す言葉であって、シーンを指すものではない。その状態とは、メジャーレーベルへと繋がる二軍の様なもので、多くのミュージシャンに取ってはインディーとはそこから上がる事を目指すべき場所でしかない。結局、それがノルマを「売れない時代の苦労」なのだとして、ミュージシャン達に受入れさせているのだと思う。

イアンはインディーシーンのファンを増やしていくには、批評的なインディーメディアが必要と言うが、それが受入れられる下地があるとも思えない

前にも書いたけど、お金を払ってでもライブをやりたい人が沢山いるから、ノルマ制が成り立つ。高いと言ったって、バンドだったらメンバー一人辺り5千から1万円ぐらい払えば良いし、それぐらいならバイトを1、2日働けば稼げる。それで立派な音響と照明に、アンプやドラムセットまで使えるんだから(欧米では持ち込みが基本)、考えてみりゃ恵まれた環境だろう。

ライブハウスの風景

ノルマが嫌なら、イアンの言うように別の場所でライブをやれば良い。探し回ればライブが出来そうな所は他にもある。でも、そんなのが面倒だから、みんなライブハウスにお金を払っているのが現状だ。

ただ、今夏に「ぐるぐる回る」のフライヤーを巻きにライブハウスを回って来たが、状況は変わってきているようだ。さすがに数が多くなり過ぎたのか、スケジュールを埋めるのがキツそうな店が多くなっていた。それでノルマを値下げしたり、パーティースタイルへの移行を模索する店があったりと、ライブハウスも変わりつつあるみたいだ。

もちろん、ライブハウスに来るお客が増えてる訳じゃないから、そのうち潰れる店も出てくるだろう。ライブハウスも淘汰の時代を迎えつつあるようだ。



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映画「ハイ・フィデリティ」で、万引き犯の二人組が作ったデモテープとして流れる曲。あれ、ROYAL TRUXのこの曲だったとこの前知った。店員の二人が憮然としてその音を聞いているシーンが印象的。こんな事があったらなあと、送られて来たデモは全部聞いているんだけどねえ。


posted by 竹内知司 at 00:12| 日本の音楽産業について考える

2011年11月19日

サルでも開けるロックフェス講座:スライド資料そのまんま掲載

9月に新宿のNAKED LOFTでやったトークイベント「ぐるぐる回る2011開催記念!サルでも開けるロックフェス講座」。昼間という時間帯にも関わらず大勢のお客さんが来てくれました。トークの模様をビデオなどに撮ってなかったのですが(内容的に流せない)、せっかく作ったので当日使ったスライドシートをこのブログに置きます。

あくまでその場で内容を喋ることを前提にした箇条書きの資料なので、なんの参考にもなりませんが、フェスをやりたいと思っている人は見てみてください。リクエストがあれば、ぜひ第2回を開催したいと思っています。

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「ぐるぐる回る2011開催記念!サルでも開けるロックフェス講座」
日時:2011年9月19日(月・祝日)
場所:新宿NAKED LOFT
出演:竹内知司 (埼玉・ぐるぐる回る主催者)
上村智仁 (長野・木曽鼓動主催者)
菊地陽祐 (つくば・つくば音の森主催者)
だいち69(青森・夏の魔物主催者、THE WAYBARK
岡本俊浩 (ライター、「野外フェスのつくりかた」著者)



ぐるぐる回る2011開催記念!サルでも開けるロックフェス講座

竹内知司 2008,2009年に新宿・芸能花伝舎にて「廃校フェス」を開催。2010年から埼玉スタジアムにて「ぐるぐる回る」を開催。

上村智仁 2006年より長野・木曽にて「木曽鼓動」を開催。

菊地陽祐 202007年より茨城・つくば市にて「つくば音の森」を開催。

だいち69 202006年より青森・つがる市にて「夏の魔物」を開催。ロックバンドTHE WAYBARKのボーカル。

岡本俊浩 ライター。「野外フェスのつくりかた」著者

本日の内容場所選び企画書作り予算設定出演者ブッキング必要な機材、資材当日の運営まとめQ&A

場所選び・野外か屋内か?-野外は解放感が最高。でも天候が心配。-野外だとステージ設置に費用が掛かる。-屋内は制限が多い。-電源の有無、容量、位置が重要。-両方に共通するのは近隣への音対策・公営か民営か?-公営は安い、民営は高い-公営は広いが、交通アクセスが悪い-公営は規制がやたらと多く、職員の融通が効かない。

企画書作り。まず企画書を出さないと話にならない。公共施設を使う場合はロックロック言わない方がいい。フェスをやる意義を書く。近隣への音対策が重要。動員見込み数。

予算設定場所代、機材費、出演料の3つが基本。最低限見込める動員数×チケット料金=予算。費用は出来る限り削る。自分で出来ることは自分でする。最初から赤字を出す前提にはしない

出演者ブッキング。動員は出演アーティストの名前で決まる。第1回はアーティストに様子見される。とにかく返事が遅いので、同時に何個もオファーする。バンドの人気はmixiコミュの登録数など、客観的な数字も参考にする。上り調子のバンドを見極める。バンドの組み合わせが肝心。組み合わせ方で動員数はかなり変わる。あくまで「自分が好きなバンド」であることが基本。オファーはコネに頼らない。出演料の設定は難しい

必要な機材、資材:ステージ設置費用。PA音響機材。電源照明。パーテーション。リストバンド。スタッフパス(Tシャツ)。机、椅子、トランシーバー、メガフォンなどの資材。ステージドリンクなどケータリング。

当日の運営。とにかく主催者にいろんな事が集中する。細かな役割分担、指示系統を作っておく。フェスの内容によってお客の質が変わる。想定外の事は必ず起こる。終りが肝心。会場は綺麗にして帰る。

まとめ11回で終わらせない。フェスは続けて初めて意味が出てくる。赤字は出さない。1円でもいいから利益を出す。その為にはドケチになるべし。主催者は報われない。鋼のハートで臨むべし。

Q&A質問がある方はどうぞ!




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posted by 竹内知司 at 00:43| 使えるアートマネジメント考